2009年01月03日

 33兆円の「内部留保」なのに、なぜ「大量首切り」か?

 ”派遣切り"の反省なき、経団連・御手洗会長発言の白々しさよ!
  ☆1月1日の「産経新聞」は、以下の記事を伝えました。

 <御手洗経団連会長が年頭所感 「未曾有の危機」雇用確保を重視
 日本経団連の御手洗冨士夫会長は1日、平成21年の年頭所感を発表した。

 世界経済が同時不況の様相を強める中で、御手洗会長は「世界経済は未曾有の危機にある」と強調。そのうえで「景気回復に全精力を注ぎ、危機的な経済状況から抜け出さなければならない」と不況からの脱却を最重要課題に挙げ、経済の活性化と社会の安定に向け、経済界も力を尽くす意向を示した。

 一方、社会問題にもなっている雇用問題を解決するため、取り組みを強化する必要性も訴えた。御手洗会長は「官民が協力して雇用保険などのセーフティーネットを強化するとともに、働く場の創造と人材育成に一層努力する」とし、雇用確保を重視する姿勢を強調した。>

 ★御手洗会長は、雇用問題の解決策が①「雇用保険などのセーフティーネットの強化」であると語り、そればかりか、②「働く場の創造と人材育成に一層努力する」とまで述べている。これが、その足下のキャノンが、1700人の派遣切りを強行した御手洗会長の語りうる言葉だろうか?①は、換言すれば、”企業が首を切ったあとの救済は国が行うべきだ”と責任を国=行政になすりつけているに他ならず、また、②は、まさに「言行不一致」の極に他ならない。一体、今回首を切られた1700人は「人材」ではなかったと言うのか?空前の利益(後述)を産み出すのに貢献してくれた人々を差し置いて、どんな「人材」を新たに「育成」しようというのか?

 33兆円=空前の「内部留保」を産み出した”報酬”が、なぜ4万人を超える「首切り」なのか?大企業の「減益増配」が果たして許されるのか?「会社」は一体誰のモノか?従業員は、単なる「景気の調整弁」か?

 ☆昨年12月24日の「南日本新聞」は、以下の記事を伝えました。

 <雇用より株主重視/内部留保は空前の33兆円、減益でも増配維持=大手製造業16社集計 

 トヨタ自動車やキヤノンなど日本を代表する大手製造業十六社が大規模な人員削減を進める一方で、株主対策や財務基盤強化を重視した経営を続けていることが二十三日、共同通信社の集計で明らかになった。二〇〇八年度は純利益減少が必至の情勢だが、十六社のうち五社が増配の方針、前期実績維持とする企業も五社だった。

 利益から配当金などを引いた内部留保の十六社の合計額は〇八年九月末で約三十三兆六千億円。景気回復前の〇二年三月期末から倍増し、空前の規模にみ上がった。

 過去の好景気による利益が、人件費に回らず企業内部にため込まれている。世界的な景気減速が続く中で、各社は内部留保などの使途について慎重に検討するとみられる。一方で〇八年四月以降に判明した各社の人員削減合計数は約四万人に上り、今後も人員削減を中心とするリストラは加速する見通しだ。 <中略>

 調査対象は、キヤノン、リコー、シャープ、ソニー、富士通、NEC、日立製作所、東芝、パナソニックの電機・精密九社と、トヨタ自動車、日産自動車、ホンダ、マツダ、スズキ、いすゞ自動車、デンソーの自動車業界七社。 <以下略>>

 ★キャノンは、2001年度末~2008年9月末の間、内部留保を9000億円→2兆8000億に伸ばし、結果は1700人の首切り&配当は維持、トヨタ自動車は、同期間に内部留保を6兆7000億円→12兆3000億円に伸ばし、結果は5800人の首切り&配当は「未定」とのことである。大手製造業16社=電気・精密9社+自動車7社のトータルは、同期間に内部留保を17兆→33兆6000億円と伸ばし配当は、増配5社、維持4社、未定7社、「首切り」は合計4万95人に上っている。

 ★この4万人の年俸を仮に400万円(実際はもっと少ないだろうが、派遣会社の取り分も含めてこの前後か?)と仮定して、掛ける4万人で、その給与合計は、1600億円に過ぎない。これは、33兆6000億円の約200分の1以下に過ぎない。ここだけ切り取れば、33兆円という空前の巨利は、彼ら4万人を200年以上食べさせられる計算になる。然るに、200年はおろか、20年も、2年もない、僅か2ヶ月足らずであっという間に「首」にされてしまうというのは、一体如何なる判断か?

 ★「販売不振」を見込んでの「生産調整」のための「人員削減」と言いたいのだろうが、そこには、前述200倍余の余剰財務力の活かし方があるであろう。政府の「雇用対策」を頼み互いに調整しながら、緩やかな(突然の”職無し・家無し”というのではない)「人員削減」の実行のやり方もあるであろう。また、従来、ヨーロッパ社会で行われて来た「ワークシェアリング」(仕事の分け合い)という考え方・やりかたの大幅な導入もあるであろう。

 ★更には、中・長期的には、新事業分野の開拓・業種転換も含め、生き残りのための企業経営戦略の大幅な見直し・転換の中で、従業員の長年の労苦に報いつつ、彼らの転職・再就職の道を可能な限り保障してゆくことも、考え方次第で決して不可能ではないだろう。そこが、経営者としての踏ん張りであり、経営者責任の全うの仕方でもあるのではないか?イケイケドンドンの好調の時ばかり元気がいい経営者では、本来「経営者」の名に値しない。苦しい局面をどう知恵を出し合い、従業員と助け合い、乗り切って行くのかが「経営者としての手腕」の発揮のしどころではないのか?「信長→秀吉→家康(泣かぬなら啼くまでまとうホトトギス)」の故事にも習った辛抱強い経営能力の発現が強く望まれるところである。

 ★少なくとも、従業員を「人間」とみなし、巨額の「利益」を上げさせてくれた「主体」=「恩人」とみなす観点が僅かでもあれば、必要人件費の200倍の「内部留保」を抱えながら、いくら何でも電光石火の「首切り」はないだろう。

 民主党は迷わず「製造業への派遣再規制」に踏み切るべし! 

 ☆1月2日の「毎日新聞」は、以下の記事を伝えました。

<<民主党>派遣法見直し論浮上 製造業再規制も

 「雇用崩壊」が加速する中、民主党で製造業への労働者派遣を問題視する意見が目立っている。労働者派遣法改正で04年に解禁され、民主党は規制復活に消極的だったが、小沢一郎代表も1日、見直しに言及。党の緊急雇用対策本部(本部長・菅直人代表代行)を中心に、再度議論が行われることになりそうだ。民主党が再規制にカジを切れば、次期衆院選を見据え自民党との大きな争点に浮上する。
 <中略>
 民主党にはなお慎重論も強く、対案を策定した実務者は「全面禁止は企業経営への影響が大きい」と話す。>

 ★小泉の「冷血政策」の最たるモノが、「労働者派遣法」の改悪であったことが、それから4年を経た今回の世界大不況で隠しようもなく明らかになった。だが、これを結果論で語ってはならない!たまたまこんなひどい不況になったから否応なしに「首切り」が行われたのではなく、この「首切り」自体の必然性自体が上述のように疑わしいだけでなく、「製造業への派遣の解禁」そのものが本質的に「反労働者的」なものであり、「雇用の不安定」の元凶ソノモノであるからだ。「日本的終身雇用」の成果として「高度成長」を遂げてきた日本資本主義が、何を血迷ったか、欧米流に追従し、「期間雇用」とか「派遣」を大々的に取り入れて間もなく、本家本元の欧米資本主義が、自らの「強欲」の果てに、80年ぶりに大コケに転けてしまったのである。その「追従」の音頭取りをしたのが、中曽根以来の自民党政権であり、なかんずくその総仕上げが「小泉改革」であったことは、今や誰知らぬ事となりつつある。

 ★これほど赤裸々に「製造業への労働者派遣」の「犯罪性」が明らかになっている時に、「民主党にはなお慎重論も強く」とは一体如何なることか?「国民の生活が第一」を標榜する党ならば、躊躇なく「再規制」に踏み切るべきなのに、他の野党3党に押されても尚、「慎重論」が強いとは、党指導部は、支持母体の「連合」は一体何をしているのか?企業経営への影響が大きい」とは、大企業の正社員のみの連合体である「連合」の「自己保身」だけが透けて見えるのではないか?こんな局面に「賃上げ要求」などはもってのほかであり、党も労働組合も、欧米流の「ワークシェアリング」など大胆な労働政策を掲げ、企業経営者の不様な体たらくを糾弾し、新たな労働環境ー企業風土の構築に邁進すべきではないか! <哲>

 


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Posted by 代表:岩井哲 at 15:48│Comments(0) │日本の事
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