2008年06月15日

現代の低賃金労働~日本社会の未来は?

 深川さん、貴方の以下のコメントに胸を突かれました。<彼が言ったのは『派遣制度は日本を潰すことになりますよ』でした。・・・半年前まで勤めた会社では社員の六割が派遣でした。それも30代後半までの男女でした。年収が少ないから独身ばかり。男に生活力がなければ相手の女も結婚できない、当然ながら子供も持てないのです。>・・・そう、確かに紛れもなく、「労働者派遣制度」は、現代の底辺労働者を大量に生み出すことで、「労働力の社会的再生産構造」を断ち切り、もって日本社会の根底を崩しつつあると思います。自分の日常生活から余り見えないところで進行している事態なので、迂闊な私など、うっかおり見過ごしかけていたことでした。反省、反省・・・。

 実は同じようなことが、この社会の別な場面でも同時進行しています。私は、ここ数年来、鹿児島市の中心部で医療・福祉関係の「職業紹介所」を営んでいます。あらかじめ申し上げておけば、これは「派遣会社」ではありません。幸いなことに、医療・福祉分野では、人体・命に関わる職業ということで、医療事務などほんの限られた職種を除き、未だ「派遣」は法律上も認めらておらず、従って当社も、あくまで「紹介業」にとどまっています。この仕事から見える、重大な事柄があります。それは、上記の派遣労働者制度とは制度的には異なりますが、根底には共通する問題が横たわっています。

 それは、介護分野における①労働者の賃金の低さと、②契約・パートの労働者の比率の増大です。彼らの基本給は、幅はありますが、11~12万円からよくて15万円位で、それに夜勤手当一晩3000~5000円×月4~5回、その他住宅手当・扶養手当等(無論、ない所も多い)などが付き、総額14万円~18万円位、そこから税金・保険等引かれて、手取り12万円~15万円位の世界です。これにいいところで(病院・クリニック系列など)年2.5~3.5ヶ月位のボーナス(無論、ないところもあります)がついうのても、年収せいぜい実質200万円前後というところでしょうか。(長くなるので、②は記述を省略。)

 ここで、例えば自宅から通う女性などは、家賃いらず(でも家に入れている人もいますー親もそんなに裕福ではない)ですからまだ何とかなります。しかし、そうでない自活する女性は、この中から家賃・車の経費・食費などを除けばいくら残るでしょうか?生活に夢を持てるような可処分所得が果たして手元に残るでしょうか?加えて、男性はもっと悲惨でしょう。若い男性の中で、結婚も出来ず、従って子供も作れず、まして家を建てることなど夢のまた夢、という人々の比率が増大していると思われます。よくテレビコマーシャルで苦しげな表情の若者が、介護労働の窮状を訴えている画面に出くわします(あれも不思議なコマーシャルです)が、まさにあの通りなのです。看護婦さんたちは、まあ、これに3~5万円以上は上乗せした手取りになりますので、たとえ離婚しても子供を抱えて(母子手当などに助けられながら)何とかやっていける状況のようです。

 しかし、若い男性は特に悲惨です。鹿児島は大都会に比べ仕事が少ないので、大卒の若者の介護分野への参入比率が高いようですが、その彼らが低賃金構造に苦しんでいるのです。少しでも給料のいいところを探そうと皆必死ですが、どこも50歩100歩でさほどいい所はなかなか見つかりません。それに、看護婦さんと違って、転職の際「経験加算」(従って昇給)が殆ど認められません。日々、こういう方々を対象に「紹介業務」をやっているのですが、話していて胸が苦しくなることが多い状況です。自分が男だけに、若い頃の自分(私は還暦を過ぎています)の収入などと比べて、その余りの違い(8年前まで私は東京にいました)に正直胸が詰まる思いの毎日です。

 製造業ー工場における「労働者派遣制度」の問題点とは、仕組みや見かけはやや異なりますが、介護労働者の現状も極めて危機的です。この現状を規定する「介護保険制度」を制定(それ自体は正しい)し、その後2年に1回くらいの報酬見直し(引き下げ)を繰り返しているのが、この間の「年金問題」「後期高齢者医療制度」で悪名をはせているかの厚生労働省(名称を「国民虐待省」に変えたらいい!)です。根っ子はみな一つです。・・・現代の官僚ども・自公政権は一体何を考えているのか?

 こうした現状を、何とか打破しなければこの日本社会の未来はないだろうと思いますが、皆さん、如何お考えでしょうか?  <哲>

 


同じカテゴリー(日本の事)の記事画像
7/27 草の根世直し行進の呼びかけ(07・08更新)
衆院早期解散を求める怒りの民衆の輪を広げよう!
同じカテゴリー(日本の事)の記事
 東国原は、宮崎弁で言う“身上がり”そのもの也 (2009-07-08 19:10)
 沈没寸前「自民丸」からの水汲み出しに懸命な知事2人! (2009-06-29 09:41)
 笑ってしまいました;愛すべきキャラ?ー黒騎士より (2009-06-21 16:29)
 応援演説で「惜敗を期して」ーここまで来ると付ける薬が・・・ (2009-06-21 13:56)
 「解散は私が決める」と言い続けた男の哀れな末路・・・ (2009-06-20 17:54)
 「説明責任」論の陥穽/「友愛」の真義はどこに?ー紹介2点 (2009-06-14 08:35)

Posted by 代表:岩井哲 at 05:59│Comments(2) │日本の事
Comment list
こんにちは。私の疑問として、何故若い人々が派遣会社に登録し、派遣されることを選択するのか?です。私は五十代半ばですが、正社員です、転職したかつての会社で派遣社員としての選択をしたことがありません。企業を自分で調べ、履歴書を書き、面接を受ける、就職活動はこうしたものです。確かに派遣会社であれば楽かもしれませんし、とりあえず仕事が得られるという利便性はあるのでしょう。現在の会社に入る時は三回の面接を受けました。金と時間が掛かりますし最終面接で落ちることだってあります。就職活動にはリスクが伴うものですが派遣はリスクが低く抑えられ、かつ簡易です。二十代三十代で派遣を選択するのは面倒を嫌うからではないか、と。派遣より紹介を利用すべきです、私自身が専門職紹介会社のヘルプで就職したように、です。ただし当然ながら専門知識と経験が必要です。他を以って代えがたい何かが求められるのが求人側の視点なのです。
Posted by 深川扇橋 at 2008年06月15日 11:05
大学卒業して鹿児島市の青果会社に就職した同級生は数年後に大手スーパーに転職しました。結婚して生活するには収入が少ないからです。そんなことは最初から分かっていたはずですが、親のコネで簡単に入れたからです。自分の力で就職する気概に欠けていたのかもしれません。私達の時代もオイルショックの後遺症で就職難でした。むろん就職氷河期ほどではありませんが、就職留年組も含めての激戦だったのは覚えています。楽な仕事で、かつ高い収入などありません。同様に、楽に仕事を得て、かつ正社員などと期待するのは虫が良すぎるかもしれません。鹿児島の所得が少ないのは経営者や中央に搾取される、地方での限定雇用を希望している、色々理由があるかと思います。私も地方ではなく、東京への転職にしました。やろうと思えば年齢など関係ないのです。
Posted by 深川扇橋 at 2008年06月15日 12:00
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

削除
現代の低賃金労働~日本社会の未来は?
    コメント(2)