2008年10月19日

海自「格闘訓練」、人が死んでも何故「内部調査」なのか?

 「事故調」が取り仕切るのみで、何故、警察は関与できないのか?

 ☆10月18日の「毎日新聞」は、以下の記事を伝えました。

海自格闘死亡:医官立ち会わず 教官も適性低い

 広島県江田島市にある海上自衛隊第1術科学校入校中の3等海曹(25)が15人を相手にした格闘訓練中に倒れて死亡した問題で、訓練当時は医官が立ち会っていなかったことが、海自呉地方総監部の事故調査委員会の調べでわかった。ほかにも「人的要因」として(1)立ち会い教官の格闘訓練の指導者としての適格性が低い(2)隊員は格闘経験が浅かった--などの事実も判明。海自では安全管理に問題があったとみて、週明けにも中間報告を公表する。・・・・・・

  調査委が注目しているのは、危険を伴う特警隊の訓練で医官が立ち会っていなかった点。狭い場所での戦闘訓練や潜水訓練では通常、緊急事態に対応できるよう医官を立ち会わせている。また、指導に当たった教官(2等海曹)は剣道初段、少林寺拳法初段で、指導者の目安となる陸自の格闘技の課程も履修していなかった。

 さらに、3曹は初歩の格闘ができる程度で「結果論ではあるが、連続して15人の組み手に耐えられる技量を持っていたかは疑問」(海自幹部)という。>

 ★今回の死亡事件で驚きは、警察が一切動かず、「事故調」なる内部機関がすべてを取り仕切っている点である。イージス艦の時は、確か海上保安庁が関与はした。今回、証拠保全を始め、関係者の取り調べなど、警察が何ら関与していないことを見ると、「自衛隊」は治外法権のエリアなのであろうか?私が不勉強なのか、これまで余り関心を持ってこなかったが、改めて不思議に感じている次第。そう言えば、昨年のイージス艦事故の際も、誰一人「逮捕」されなかったのではなかったか?人が死んで、誰も警察の調べがない、誰も「逮捕されない」???私の疑問が「常識外れ」なのか?・・・この闇に鋭いメスが入れられなければならない!真相究明に向け、「内部調査」も結構だが、まずは「外部調査」=警察の捜査は当たり前、不可欠の手続きではなかろうか?

 ★前の投稿で、筆者は被害者の青年を「素人」と書いたが、そのことは、上記の記事で更に裏書きされつつある。それどころか、指導教官までが、「初段」では話にならない。特に、「少林寺拳法」は筆者の知る限り<蹴り+関節技主体>の「約束組み手」(つまり、ガチンコ対戦ではない、約束事の世界)の稽古であり、(合気道ほどではないが)「打撃系」の格闘技では必ずしもない。この競技は、昔、何ヶ月か私も体験があるが、これが「打撃系」ではなく、フルコンタクトではないことに飽きたらず、すぐに辞めた(それから極真空手に行った)覚えがある。この競技のこのレベルの指導者に率いられての「格闘訓練」では、はっきり言って、何人死者が出ても不思議ではない。「指導者の目安となる陸自の格闘技の課程も履修していなかった」となれば、尚更である。そこへ、「隊員は格闘経験が浅かった」とくると、これはもう素手のケンカである。ストリートファイトと何ら違いはない。人の命を、「結果論ではあるが・・・」と切り捨てる環境で、こんな危険きわまりない「訓練」が日常行われているとすれば、何が起こっても不思議はない。 

 ☆10月19日の「読売新聞」は、以下の記事を伝えました。

 <海自3曹死亡「教官の管理不十分、制裁は否定」…事故調

 海上自衛隊第1術科学校(広島県江田島市)で先月、「特別警備隊」の養成課程にいた3等海曹の男性(25)が同僚15人との格闘訓練後に死亡した事故で、海自の事故調査委員会が、訓練に立ち会った教官2人の安全管理が不十分だったとする一方、15人の行為は「訓練」として問題視しない方向で中間報告をまとめていることがわかった。同僚による私的制裁との見方を事実上否定する内容だが、「1対多数」の格闘訓練は術科学校のカリキュラムにはなく、本来定められていない訓練を正当化する内部調査に批判が集まるのは必至だ。

 ・・・・・教官は、5月にも異動直前の別の隊員が同じ格闘訓練をして前歯を折るけがを負っていたため、マウスピースを付けることや、1人50秒の格闘後、10秒程度のインターバルを設けることを条件に許可したという。・・・・・

 これを受け、事故調査委が調べた結果、〈1〉7人目を終えた時点で男性が棒立ち状態だったのに、教官が訓練を続行させた〈2〉男性が倒れた時、教官に十分な医療知識がなく、熱射病と勘違いした--ことが判明。このため事故調査委は、2人の教官が訓練中、適切な判断をしていれば、男性は死亡に至らなかった可能性があると判断した。

 一方、15人の同僚は、事故調査委の調べに「5月の格闘訓練が感動的だった。もう一度同じ形で送り出してあげたかった」などと説明、男性へのいじめや嫌がらせも「なかった」と否定しているという。>

 ★防具の点でも、常識外れの可能性が高い。言及されているのは、「マウスピース」のみである。これまでのネット・新聞報道に基づく限り、一番決定的な問題は、グローブを着けていない点である。二番目、にヘッドギアを着けていないこと。三番目に、一・二の条件下で、頭部の打撃を禁止していないこと。ボクシングやキックボクシングはグローブを着け、双方スパーリングではヘッドギアを着け、極真空手は、一・二の条件がない代わりに、頭部の打撃を禁止している。三つの条件をすべて欠いたところで行う格闘技の訓練を、筆者は寡聞にして知らない。少林寺拳法などは、確かフルフェイスのヘルメットをかぶり試合をしていたように記憶している。上記の記述に間違いがあれば、どなたか教えて欲しい。また、10秒間のインターバル、これも常識外である。ボクシングやK1などの試合を見て欲しい。1分間のインターバルを取っている。これなしで、15分も続けること自体が、「殺人的」であろう。

 ★「男性が倒れた時、教官に十分な医療知識がなく」と書いてあるが、これは「医療知識」以前の、格闘技に関する「知識・判断能力」が完全に欠落していたのである。どのような打撃が、どのような結果をもたらすかの判断力がなく、「医療知識」だけあっても、およそものの役には立たないであろう。

 ★「5月の格闘訓練が感動的だった」と15人の隊員達が述べているそうだが、何に「感動」したのか疑問である。格闘技の常識・防具の常識・医療知識のすべてを欠いたところで、その「感動」は危険なだけでなく、「人命軽視」の恐怖が漂う。

 ★「指導員クラスでも5人が限度」と前書いた。この青年は、別な情報によれば2~3人目でふらつき、7人目で「棒立ち」だったようであるが、誰一人止めるだけの判断能力を持たなかった。これは悲劇であるし、責任は海自の上部にある。この責任を隠蔽するように、「15人の行為は「訓練」として問題視しない方向で中間報告をまとめている」という。こうなると、真相は闇から闇である。警察も関与せず、客観的な調査もなく、この青年の死の真相が解き明かされずに終わってしまうことを、果たしてこのまま許していいのだろうか?  <哲>


 


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Posted by 代表:岩井哲 at 17:53│Comments(0) │日本の事
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