2008年10月23日

海自・噴出する内部批判を「中間報告」は押さえ込めるのか?

 ☆10月22日の「毎日新聞」は、以下の記事を伝えました。

<海自格闘死亡>防衛省が中間報告「必要性認めがたい」

 海上自衛隊第1術科学校(広島県江田島市)で特殊部隊「特別警備隊」の養成課程に入っていた3等海曹(25)が格闘訓練中に倒れ死亡した事故で、防衛省は22日、事故調査委員会の中間報告を公表した。養成課程をやめて異動する直前の隊員に「1対15」で行った訓練形態が問題となったが、報告書は「必要性は認めがたい」と断定。「集団暴行」については「そういう供述は得ていない」と述べるにとどまった。

 一方、同省の担当者は、3曹の死亡を「公務災害」として認定する方針で検討していることを明らかにした。「認定要件があるので慎重に分析、検討したい」とした。

 中間報告は訓練に参加した隊員学生や教官から当時の事情などを聞き取り、まとめられた。報告書によると、1人が多人数を相手に行う訓練は同隊の同好会「格闘部」で続けられており、「学生の間でも、『伝統』であるという理解が生じた可能性がある」とした。「やらないと言える雰囲気ではなかった」との証言もある。>

 ★「必要性は認めがたい」と「断定」しながら、一方で、「公務災害」として認定する方針で検討しているという。「認定要件があるので、慎重に分析、検討したい」とも言うが、一見して、矛盾だらけ、支離滅裂である。では聞くが、「必要性」のない「公務」というのがこの世の中にあるのか?あっていいのか?必要性のある事柄の中から、公務とそうでないものを区別していくというのが、世の「常識」というものであって、必要性のないことを「公務」と強弁するような”論理破綻”を敢えて今回強行するならば、いずれ「自衛隊」という「公務」遂行集団自体の、「必要性」が疑われてくるということになって行くのではないか?

 ★また、一方で、「伝統」という言葉が一部飛び交う。しかし、報じられる限り、前例は今年5月の一例のみである。いやしくも「伝統」などと強弁したいならば、かくかくしかじかの前例が、10年、20年も続いていると実証しない限り世間には通用しない。これは、「弁解」という名にも値しない”逃げ口上”でしかないのではないか。マスコミも、その名誉にかけて、このようないい加減な遁辞を許すべきではないのではないか。

 ☆10月23日の「南日本新聞」は、以下の記事を伝えました。

<「焼き入れ、集団暴行」ー内部から批判噴出ー「異動前説明つかず」
 特別警備隊をよく知る三佐は「不審船に強制移乗し、制圧する部隊だから、一対多数の格闘は必要。米海軍の特殊部隊でもやっている」とした上で、「三曹がやめる直前にやっというのが、どうしても説明がつかない。集団暴行と言われても否定できない」と話す。部隊指揮官の一佐も「鍛えてやろうとか、やめる隊員がいとおしいという感情とは違う。焼きを入れてやる、半殺しにして異動させるということ」とし、「集団暴行と認めて、自己批判すべきだ。そうしないと、自衛隊が旧軍のように見られてしまう」と中間報告を強く批判する。

 一方、徒手格闘を最初に始めた陸上自衛隊の中でも「最強」と言われ、全自衛隊大会で何度も全国優勝しているパラシュート降下部隊の第一空挺団。一対多数の格闘訓練も行っているが、制限時間は2分間で、通常3~4人まで。「15人というのは異常。とても訓練とは言えない」と同団OBの三佐は話す。「異動する隊員のはなむけに記念試合をすることがあったが、あくまでも一対一。15人はあり得ない」>

 ★筆者は、前2稿で、「格闘技の常識」という観点から、様々の疑問を呈してきた。これに対し、格闘技界から何らかの反響があるのではないかと期待してきたが、今日、図らずも、自衛隊の内部から、所謂「格闘技の常識」に属する貴重な意見が聞かれることになった。喜ばしい限りである。自衛隊の中にも人はいた!これは嬉しい発見である。この空挺団の三佐が語る内容が、まさに「格闘技の常識」に沿ったものであり、極真空手の試合・審査も2~3分、かなりのインターバル(3分以上)をおいて、勝ち抜き戦の次の相手と対戦するという形式であり、10秒おいて15人連続などというのは、何千、何万人に一人というような歴戦の猛者でなければ不可能事だ。

 ★「集団暴行と認めて、自己批判すべきだ。そうしないと、自衛隊が旧軍のように見られてしまう」という三佐の危機感は極めて鋭く正しい。この辺で誤魔化しの「中間報告」→「最終報告」へこのまま至るならば、自衛隊内部の矛盾・軋みは修復不可能な事態に遠からず至るのではないか、ということを筆者は強く危惧・警告するものである。


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Posted by 代表:岩井哲 at 05:57│Comments(0) │日本の事
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