2008年11月18日

独善的・稚拙な「歴史観」で暴走する空自に有効な歯止めが必要!

☆「田母神論文」は、9ページにわたる"論文"の冒頭で、以下のように主張する。

 <我が国は戦前中国大陸や朝鮮半島を侵略したと言われるが、実は日本軍のこれらの国に対する駐留も条約に基づいたものであることは意外に知られていない。日本は19世紀の後半以降、朝鮮半島や中国大陸に軍を進めることになるが相手国の了承を得ないで一方的に軍を進めたことはない。

 ☆11月1日の「東京新聞」は、「『小学校から勉強を』 「低レベル」論文内容」と題して、以下の記事を伝えました。

 <抜粋>:<「日本の戦争責任資料センター」事務局長の上杉聡さんは「こんなの論文じゃない」とうんざりした様子。「特徴的なのは、満州事変にまったく触れていないこと。満州事変は謀略で起こしたことを旧軍部自体が認めている。論文は『相手国の了承を得ないで一方的に軍を進めたことはない』というが、満州事変一つで否定される」と指摘する。>全文以下

http://s04.megalodon.jp/2008-1101-1138-37/www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2008110102000087.html 

 ★「田母神論文」の特徴は、自らの主張に不都合な歴史的事実には、一切触れようとしないことである。1928年の張作霖爆殺事件については、「近年ではソ連情報機関の資料が発掘され、少なくとも日本軍がやったとは断定できなくなった。」などと、自己に都合のよい言説を記した何冊かの書物の「題名」を掲げて怪しげな"情報"話を振り回し、歴史的事実を根底からねじ曲げようとし、また、上記、上杉聡氏が述べるように、日中戦争に至る最も重大な結節点たる<柳条湖事件→満州事変>については、不思議なことに一切口をつぐんでいる。

 ☆「ウィキペディア」は、1931年の柳条湖事件に端を発する満州事変について、以下のように記しています。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%BA%80%E5%B7%9E%E4%BA%8B%E5%A4%89

 ☆同日の「東京新聞」は、「空幕長論文 不祥事続発省内怒り 『内容は持論』認める」と題する記事中で、以下の記事を伝えました。
 
 <抜粋>:<一方、物事の本質を端的にとらえ伝える能力は高く「(発言などが)防衛省のガス抜きになっている」と話す防衛省幹部も。制服組からは「気持ちを代弁してくれている」との評価もあった。>

 ★どうやら、戦後63年、自衛隊発足後54年にして、防衛庁の防衛省への昇格等を機に、<憲法外の存在である自衛隊>が、航空自衛隊を筆頭に、ある意味必然とも言えるが、極めて危険な”自己主張"を強め始めたものと推測される。

 ☆「ウィキペディア」は、以下のように伝えます。

 <自衛隊(じえいたい)は、1954年7月1日に設立された日本の防衛組織。法令上では国軍(軍隊)と位置付けられていないが、戦力を世界的に展開する戦力投射能力以外では実質その能力を備えており、日本国民や国際社会から軍隊と見なされる場合もある。英訳では『Self Defense Force(自衛軍)』と表記されるが、日本以外での報道や書籍では、陸海空自衛隊がそれぞれ『Japanese Army(日本陸軍)』『Japanese Navy(日本海軍)』『Japanese Air Force(日本空軍)』と表記される事もある。また、日本国内の一部の書籍でも「事実上の軍隊である」と表記されている場合がある。>

 ★戦後最大級の<国家的な矛盾である自衛隊の存在>=(問題の本質を隠蔽したまま、本音と建て前を使い分け、現実を恣意的に推し進めようとする戦後保守政治の最大の欠陥の所産)は、<政治>がその問題点を有効に摘出・解決仕切れないまま半世紀を経過し、マスコミ等ではなかなか窺い知ることは出来ない中で、その国家的矛盾が、自衛隊内部に累積し、いよいよ或る種の”飽和点"に達しつつあるのではないかと思われる。上記の記事中の「ガス抜き」とはその辺の事情を指すものであろう。また、その象徴的表現の一つとして、今回の田母神論文の位置を捉えることが必要であると思われる。

 ★その歴史的認識は極めて稚拙・独善的で、とても日本史ー世界史ー国際政治の諸研究の客観的な水準に到達するものではなく、こんな見解を有する人物(群)が”一軍”を率いるトップの座に就いていることを思うと、「気狂いに刃物」の如く、かつての「関東軍」の暴走を想起させ、読むだに身の毛がよだつ思いがするが、しかしこれが、紛れもない今の日本の現実であることを見据え、冷厳に対処していく他はない。経過的矛盾がどうあれ、ここには「文民統制」というものが、断乎として貫徹されなければならない!国際政治に”失敗"は許されないからだ。

 ☆11月4日「東京新聞」は、「論文問題更迭 前空幕長は定年退職 辞職拒否 懲戒調査も応じず」と題して以下の記事を伝えました。

 <防衛省は三日、過去の侵略戦争などを正当化する論文を発表し、航空幕僚長を更迭されたばかりの田母神(たもがみ)俊雄空将(60)=十月三十一日付で航空幕僚監部付=を三日付で定年退職とする異例の人事を発表した。本人が辞職や、懲戒処分への調査手続きを拒んだためとしている。> 

 ☆「自衛隊法」46条は、以下の規定を掲げている。
 <(懲戒処分):隊員が次の各号のいずれかに該当する場合には、これに対し懲戒処分として、免職、降任、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。
1.職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合
2.隊員たるにふさわしくない行為のあつた場合
3.その他この法律若しくは自衛隊員倫理法(平成11年法律第130号)又はこれらの法律に基づく命令に違反した場合>

 ☆11月3日のasahi.comは、以下のように伝えている。

 <自衛隊員が職務に関する論文発表や講演をする場合、事前に届け出る必要がある。防衛省は田母神氏の論文投稿が「職務に関する」とみており、届けなかった理由や論文の内容について聴いて処分を検討する方針だった。 >

★田母神氏の論文発表という行為が、隊法46条1項に照らして厳しく吟味されなければならないにも関わらず、ここに、おかしな誤魔化しが発生している。定年退職とした理由が、「本人が、辞職や懲戒処分への調査手続きを拒んだため」とされるが、こんな奇っ怪なことはない。およそ公務員たる者が(イヤ、民間人であっても)、本人が拒めば事情聴取は行われず、その結果必要な処分が行われない、等ということが一体あり得るだろうか?明らかにここには、防衛省ー政府による<問題隠しの政治操作>が行われている!このような人物を任命した防衛大臣ー総理大臣の「任命責任」等の議論を回避せんが為の、極めて姑息なやり方である。野党の国会に於ける追及は余りに手ぬるく、マスコミもこの点に関する追及が決定的に甘過ぎるのではないか? <哲>


同じカテゴリー(日本の事)の記事画像
7/27 草の根世直し行進の呼びかけ(07・08更新)
衆院早期解散を求める怒りの民衆の輪を広げよう!
同じカテゴリー(日本の事)の記事
 東国原は、宮崎弁で言う“身上がり”そのもの也 (2009-07-08 19:10)
 沈没寸前「自民丸」からの水汲み出しに懸命な知事2人! (2009-06-29 09:41)
 笑ってしまいました;愛すべきキャラ?ー黒騎士より (2009-06-21 16:29)
 応援演説で「惜敗を期して」ーここまで来ると付ける薬が・・・ (2009-06-21 13:56)
 「解散は私が決める」と言い続けた男の哀れな末路・・・ (2009-06-20 17:54)
 「説明責任」論の陥穽/「友愛」の真義はどこに?ー紹介2点 (2009-06-14 08:35)

Posted by 代表:岩井哲 at 06:03│Comments(0) │日本の事
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

削除
独善的・稚拙な「歴史観」で暴走する空自に有効な歯止めが必要!
    コメント(0)