2008年10月08日

米英型経済モデルの崩壊と新たな経済モデルへの模索の開始

 「景気対策」を口実とする麻生の「総選挙回避」のムダな時間稼ぎをこれ以上許すな!

 ★米下院で、10/3「緊急経済安定化法」が成立した。しかし、この対策の実効性には各方面から疑問符が打たれ、この法律の柱である「金融機関からの不良資産の買い取り」だけでなく、日本の1990年代の経験に基づき、「公的資金による米金融機関への資本注入が不可欠」との見方も広範に語られる。こうした中で、実体経済の悪化に向かうとの危機感が、世界経済のみならず国内経済においても深まっている。9月の日銀短観では、大企業製造業の業況判断指数が5年ぶりにマイナスに転じ、輸出関連企業の業績悪化が懸念される。米国の実体経済が悪化すれば、米国に対する輸出が落ち込み、ドル安・円高も進行して輸出産業は大幅な減益になる。トヨタ自動車を始め、既にこのような影響が出始めている。日本の株価にも下押し圧力がかかり、日経平均が1万円→9000円に近づくにつれ、金融機関の保有株式に含み損が発生し、自己資本が損なわれる要因になり、不良債権も増え、より深刻な事態を迎えようとしている。

 このような深刻な状況に対し、「景気対策」を「総選挙引き延ばし」に利用することしか眼中にない日本の麻生は、10/8の株価の急落に際して「普通でない。想像を絶する」などと”経済政策通”ならぬ”ノー天気振り”を発揮し、「先行き不安が出てくる。何とかする対策をしないといけない」と、一切対応策の具体的内容を欠落したまま、”これ幸い"とばかりに、更なる時間稼ぎに拍車をかけようとしている。この国民無視のムダな時間稼ぎを断じて許してはならない! <哲>

 ☆ここで、「ニューズウィーク日本版」10/8が伝えた「ポスト金融危機のグローバル資本主義」と題する以下の記事を、<主要中見出し+要点抜粋>の形で見ておきたい。

ポスト金融危機のグローバル資本主義

■世界を支配してきたアングロサクソン型モデルは崩壊し、経済の新時代が始まる

 ドイツとフランスは、アングロサクソン型の金融システムに怯えていた。だがウォール街の崩壊は、彼らの経済モデルが生き残り、むしろ繁栄するかもしれないことを意味している。

■実体経済と乖離しすぎた

 「グローバル化と規制緩和のモデルは破裂した。それが今回の危機を引き起こしたのだ」と言うのは投資家・慈善事業家のジョージ・ソロスだ。彼は早くから、住宅ローンやクレジットカードの支払いなどを複雑に証券化するのは危険だと、警鐘を鳴らしていた。

 「これからは放任主義や投機性は薄れ、(過大な借入金で高リスクな投資を行う)レバレッジは減少し、信用市場は逼迫するだろう。私たちはレバレッジ解消の真っただ中にいる」とソロスは言う。

■崩壊した「市場万能主義」
 90年代を通じて規制緩和は続いた。最も象徴的なのは、銀行業務と証券業務の分離を定めるグラス・スティーガル法の撤廃だろう。その結果、銀行は大規模合併に走ったり、急増するIPO(新規株式公開)を引き受けたりした。

 グラス・スティーガル法の撤廃によって、シティグループのような商業銀行が信用デリバティブ市場に参入することも可能になった。こうした市場では、住宅ローン担保証券やそれをさらに証券化した債務担保証券が売買されており、今回の金融危機の主因になった。

■「終焉」を迎える投資銀行
 金融関係者の巨額の報酬のもととなった複雑なデリバティブ市場も縮小傾向にある。アメリカでは取引の透明性の向上のために、デリバティブの取引機関の整備を求める声がある。EU(欧州連合)はすでに、デリバティブ規制に動いている。欧州委員会は先週、債務担保証券を禁止もしくは制限する規制案のたたき台を作成した。

■バブルはいつか復活する
 政府系ファンドや新興市場にはカネがあふれている。アジア各国の中央銀行だけで外貨準備高は4兆ドルを超える。今回の救済案で必要とされる7000億ドルの何倍もの額だ。

 潤沢な資金がある以上、たとえ新たな規制が生まれても、人々はそれを回避しようと策をめぐらす。投資家(とその関係者)は規制をかいくぐるため、これまで以上に独創的な方法を模索するはずだ。

 こうした新たな資金のうち、かなりの部分がまちがいなく欧米市場に流れ込む。その結果、新興国の影響力が増し、世界の多極化が加速するのは確かだ。だが、だからといって自由市場体制が総崩れになるわけではない。

投資よりも貯蓄をする人が再び増える。節約の美徳が再び語られるようになり、短期的には金融引き締めが続く。それでも、資金はいずれ再び動きだす。新たなバブルが生まれる。エネルギー、エコ技術、宇宙--どの分野かはまだわからない。>

 
「黒騎士」さんが、また10/6~10/8にかけ、三つの投稿を下さいましたので、そのまま転載させて頂きます。今回は、3稿まとめてのタイトルとします。

週明けの東証大幅下落!迅速な対策の実施が求められているー日本政府は???
10/8 

 本日、株価は瞬間1000円近く下げました。下落率では戦後の東証再開後では第三位(ブラックマンデー、スターリンショックに次ぐ)となります。本年7月に連続下落日数が記録的、それは1953年以来の出来事であったこと、奇しくも、それはスターリンが死んだ年です。スターリンの死で朝鮮戦争が終結、特需の恩恵を失う日本経済の先行きを悲観してショック安となりました。

 世界同時株価下落、民間のドル調達機能停止、円単独上昇、実体経済の悪化、どこから手を入れるのか、難問題をどう撃破するのか?どんな対策が必要か?市場はそれを評価するのか?短期間に計画・実施が求められています。ウォール街の言葉に『強気でも弱気でもいい。だが、のろまは駄目だ』とあります。まさに、その通りだと。

10/7

 本日一時的ながら株価が一万円大台割れとなりました。さて、七月に半世紀振りの連続下落現象が現れた、と投稿しました。値幅は小さいけれど、相場の世界で言う(小石崩れ)です。小石崩れは鬼より怖い。その後に来るのは大暴落であると古人は伝えています。大台割れが投資家に与えるのは心理的なものであり、漠然とした不安でしかありません。TVで見ましたが『株価が戻るのを待つしかありません』とか『こんなに下がるとは思わなかった』とのコメントだったと。経験から言えば、こういうコメントが多い時は下げ途中でしかありません。

 いろいろな人から『これからどうなる?』と聞かれますが、不思議ながら天井と大底では取引量(出来高)が急増しますし、上下のぶれが大きくなります。これは投資家が極度のパニックに陥るからだと思います。しかし、パニックにならずに冷静にチャンスを待っている投資家がいるからこそ巨大な売りが消化される、極めて道理なのですが理解出来ないのが普通です。大切なのは、理性と度胸?そして資金です。ただ、頭と体は往々にして別の動きをするものだと。その辺りを上手くアドバイスするのが証券マンの本来の仕事なのですが。

 最近は速射砲さながらに投稿しているせいか、『以前書いたよな?』とか思ったりします。不謹慎ですが、混乱を好む性格が、現状に立ち向かうべし、と背中を押しているような気がします。(株の闇路に瓦斯灯燈し迷う御方の道標)これこそ証券マンの本懐であるべきかと。

10/7
 週明けの東証は大幅下落となりました。不幸な予想は当たらないに越したことはありませんが、是非もありません。先日投稿したように、下落は更なる対策を催促しています。

 哲さんもご承知のように、金融資本主義が大規模な投機となったのは、証券化・デリバティブ・レバレッジの三種の神器によるものですが、世界全体で5京(けい)円強の在庫(正確には建て玉、若しくは金融商品)かあります。全てを処分した場合に実現損がどれくらいなのか?です。

 豆腐屋じぁありませんが、1兆10兆の話ではないのです。兆の上の単位です。さすがに京の上はありえませんが、世界全体のGDPの数十倍であることは間違いありません。実に恐るべき数字です。

 欧州でも続々と金融・不動産の大手が危機に曝されています。株価の暴落は直接金融の機能不全となり、企業の信用収縮となります。多発すれば経済の後退・不況です。

 株価の下落が自分には関係ないと考えるような人は少ないと思います。日本のバブル崩壊の時は『ざまあみろ!』という雰囲気がありましたが、国民全てが何等かの影響を、損失を大なり小なり被ったことを知っているからです。

 個人はどう対応すべきか?一つだけ明確なのは、嵐が近づいて来たら窓を閉めるということでしょう。とりあえず、です。>



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Posted by 代表:岩井哲 at 22:54│Comments(3) │世界の事
Comment list
こんにちは。当面の信用不安を克服するため各国が資本注入することにより、いずれ金融システムはまた安定化すると思います。しかし、その後どうするかで、実体経済の回復が決まってきます。
私は、現在多くの人々の頭の中は「経済」というキーワードでいっぱいになっていると思います。そうして、八方塞になっていると思います。私たちは、ここで「社会」に着目する必要があると思います。今後健全な社会を形成しなければ、実体経済も良くはなりません。といようより、現在全く異質な社会に入りつつある先進国においては、「次の社会」に備える国だけが、来るべき将来において、健全な社会と経済を手にするということです。逆に、「次の社会」に備えない国とっては、不健全な社会と経済で没落していきます。詳細は是非私のブログをご覧になってください。
Posted by yutakarlson at 2008年10月11日 11:08
以前(五年くらい前)米国は日本バブルの発生から崩壊までを検証したレポートを出しました。今回の金融危機についても事前に認識していた節があります。ただ、政府が自由経済にブレーキを架けるべきではない、若しくは不適切と判断したのではないかと。日本と違い、米国政府の高官は金融界(証券・銀行)や産業界出身(役員・大株主)が多いのです。土壇場で公的資金による資本注入についてコメントしたのは、証券化、デリバティブ、レバレッジを縮小した場合、米国の証券や銀行の将来収益には期待出来ないと思われ、であれば、しばらく放置して買収・合併・破綻によりスクラップ&ビルドを進めたいと目論んでいたが、金融危機が全世界に飛び火し、国内でもGMの格下げをきっかけに不安が増大、それらの背景に圧されたのではないかと。

決して忘れない経済的不幸!米国は20年代大恐慌であり、ドイツは第一次世界大戦後の通貨インフレと言われます。脳裏に染み付いた悪夢の再現を避けねばならない、あのコメントに至った舞台の裏側ではなかったか。まさに賢者は歴史に学ぶ、と祈念します。
Posted by 黒騎士 at 2008年10月11日 12:37
yutakarlsonさん、コメント有難う御座います。
ブログもちょくちょく拝見しています。

黒騎士さん、いつもコメント有難う御座います。
やっぱり業界のプロのご意見は大変勉強に成ります。

「古い経済」よりも「次の社会」と言う、物の価値から情報の(知的)価値への変革は先進国にとって避けては通れない道だと思いました。物や冨の一極集中がもたらす物理的な非効率を、自然界の摂理から学ばなければいけないと思います。社会性よりも経済性を優先する自然人の欲に任せず、自治体やNPOなどの民間公益法人により、社会的なバランスを人為的に司る方が健全な社会なんでしょうね。 <風>
 
Posted by kaze at 2008年10月11日 21:43
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