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Posted by チェスト at

2008年06月17日

何が「労働者派遣制度」の問題点か?

 <こんにちは。私の疑問として、何故若い人々が派遣会社に登録し、派遣されることを選択するのか?就職活動にはリスクが伴うものですが派遣はリスクが低く抑えられ、かつ簡易です。・・・二十代三十代で派遣を選択するのは面倒を嫌うからではないか、と。派遣より紹介を利用すべきです。私自身が専門職紹介会社のヘルプで就職したように、です。ただし当然ながら専門知識と経験が必要です。他を以って代えがたい何かが求められるのが求人側の視点なのです。>

 深川さんのコメントの以上の疑問に対し、私自身、隣接業種ながら必ずしも派遣制度を日常的にwatchしてきた訳ではありませんので、十分なお答えにはなりませんが、今日は基本的な視点と思われることを取り敢えずお答えして置きます。

 労働者派遣制度の隆盛は、平成16年3月1日、小泉改革の一環として大きな法改正が行われてからのことです。従来は、かなり高度な専門的技術的職業に限定されて許可されていた「労働者派遣」が広く製造業一般にまで拡大されて許可されることになったのです。ここに決定的な問題がありました。

 そして、「労働者派遣制度」の最大の問題は、この制度の<採用枠>を決めるのがあくまで企業側ということです。ここに、資本主義の論理が貫徹されます。労働者が就職の門戸を自由に選べる訳ではありません。大雑把に言えば、単純労働(現場労働)は殆ど派遣社員に、特別に限られた専門的技術的職種のみが正社員に割り振られているのではないかと思われます。従って、従来は正社員枠で採用されていた圧倒的労働者大衆の多くが、丸ごと(その割合は、今後精査する必要があります)派遣枠に移されてしまっているのでしょう。

 アキバの犯人が所属していた「関東自動車工業」などはその典型でありましょう。これは、1970年代、鎌田慧氏が潜入ルポ=「自動車絶望工場(ある季節工の日記)」(場所は名古屋)を書いた同じ会社の静岡工場だそうです。これは、かの世界最大の規模を誇るトヨタ自動車の下請会社です。トヨタは製造業で世界一の利益を上げ、自動車の売上台数世界一も目前に迫っていますが、この世界一の利益、営業利益で2兆円を超え、純利益で1兆5千億円に迫る数字は一体何処から生み出されたのでしょう?2兆円余の利益(!売り上げではない!)の陰に如何なる労働者の悲惨が累々と横たわっているのかを、我々は思いやるべきでしょう。

 今手元に昨日の新聞がないので正確な引用が出来ませんが、経団連会長を務めるキャノンの御手洗会長が、アキバ事件騒動のこのさなかに、「労働者派遣制度」の拡充を訴えたそうです。その神経たるや「立派!」という他はありません。全国民が、アキバ大量殺人事件の悲惨さに息を呑み、その社会的要因の究明・打開に向け深刻に考えようとしている出鼻を挫くように、日本資本主義の総本山たる経団連の会長が、その職責を賭けて吼えた訳です。企業にとって極めて都合の良い、<低賃金・賞与なし・いつでも首を切れる>「使い捨て労働力」の極限の姿がこの「労働者派遣制度」に他ならないからこその「固執」「咆哮」なのでしょうか。

 利益最優先のため、普通の労働者が人並みに結婚し、子を育て、家庭を営み、家を建て、孫の面倒を見ていくという「労働力の社会的再生産構造」の維持ー発展という基本的な視点が、この国の経済・政治のトップの脳裏にはカケラもないのでしょうか?彼らは日本社会の未来を、この社会の次の世代の構築を、一体どのように考えているのか?・・・朝の支度の時間が近づいたので、この辺で筆を擱きます。  <哲>  


Posted by 代表:岩井哲 at 07:14 │Comments(3) │日本の事