2008年07月21日
明日は日本の現実かーサブプラ問題拡大のショック
☆7月20日の「読売新聞」は以下の記事を伝えました。
家を追われ、職もない…サブプライムショック拡大の現実
<アメリカの低所得者向け住宅融資「サブプライムローン」の焦げ付きが、世界の金融市場に激震を与えてからほぼ1年。問題は収束に向かうどころか、拡大の一途をたどっている。
震源地アメリカでは、家を追われた「ローン難民」が急増し、政府系住宅金融会社までが経営危機に陥った。世界的なインフレも巻き起こし、日本にも、ガソリンや食料品高騰が津波のように押し寄せている。
「戦後最大の金融危機」の現場を追った。
「20年暮らした自宅を手放す気持ちが分かるか。もう涙も枯れ果てたよ」
米東南部ノースカロライナ州の元AP通信記者ウィリアム・トウさん(72)。自らは心臓病を抱え、昨年4月には妻にがんが見つかった。夫婦の闘病資金で、年利11%、月額1368ドル(約14万6000円)のローンが払えなくなった。
「金利を下げてもらえないか。妻が治療中なんだ」
ローン会社と何度か交渉したが、相手にされなかった。裁判所に自己破産を申し出て自宅を売却した。妻は今春、亡くなった。
1988年に自宅を購入した時は、年6%程度の固定金利で30年ローンを組んだ。2000年に借り換えた「サブプライム」は低金利が魅力だったが、数年後にはその金利が跳ね上がる仕組みになっていた。
8月からは同じ町内で、借家住まいが始まる。トウさんは、「政治家や住宅ローン会社の連中は、私のような生活を一度、経験してみるべきだ」と憤る。
◇
ロサンゼルスから車で約1時間。カリフォルニア州リバーサイド郡の高級住宅街には、スプリンクラー付きの芝生の前庭が広がる。しかし、次々に目に飛び込んでくるのは、「差し押さえ物件」「銀行所有」などの立て看板だ。
「急転直下の出来事でわけがわからない」
中古のワゴン車の中で一人暮らしを続けるガイ・トレバーさん(53)は悲嘆にくれる。
04年に四つの寝室がある2階建ての住宅(158平方メートル)を25万ドルで購入、その後、住宅の価値は40万ドルにまで上がった。担保価値が上がったことから06年にローンを借り換えた。返済額は倍に増えたが、「資産価値も上がり続けているので不安はなかった」。
しかし、住宅の価値は約半分に急落。住宅不況で、インテリア・デザイナーの職も失った。昨年7月、自宅を差し押さえられ、妻と2人の子供とも別居した。「金もないし、仕事もないし、希望もない」
◇
「職求む。実務経験あり。MIT(米マサチューセッツ工科大学)卒」
昨年末に米証券会社を解雇されたジョシュア・パースキーさん(48)は6月下旬、体の前後に手製の「求職看板」を付け、ニューヨーク中心部の金融街を練り歩いた。
理系では世界最高峰といわれる名門大学を卒業し、証券実務の経験も豊富だが、半年たっても再就職先が見つからない。「妻と5人の子供を養わなければならない。日本の金融機関でもいい」と切実に語る。
◇
米抵当銀行協会(MBA)によると、08年1~3月の「サブプライムローン」での住宅差し押さえ比率は10・74%にのぼる。
焦げ付きは、貸し手の金融機関に深刻な影響を与える。国際通貨基金(IMF)は4月、サブプライム関連の損失が、09年までに世界全体で9450億ドル(約101兆円)に膨らむとの試算を発表した。日本の国家予算(一般会計約83兆円)を上回る損失額だ。
損失は米政府系住宅金融会社の連邦住宅抵当公庫(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)にも広がり、米政府が救済に乗り出す事態となっている。
雇用も直撃された。2007年のアメリカの金融部門の従業員は15万人減った。08年はそれ以上の減少が懸念されている。>
★アメリカ経済が、この「サブプライムローン問題」で危機に瀕している。「プライム」とは、金持ちで、「サブプライム」は貧乏人ということらしい。ということは、つまり貧乏人にとても払えないような多額のローンを負わせ、しかし最初の支払いは安くていいよ、だが、支払いはやがて高額になっていき、やがては払えない額になって、お手上げになり、住宅は没収、金融機関も回収できずに「不渡り」の山を築く。その結果が、上記の惨状である。かつての豊かなアメリカ、中産階級が豪奢な生活を誇り、世界一購買力の高いアメリカは、スタインベックの「怒りの葡萄」のような、荒れ果てた荒野にならんとしている。
☆5月19日の「産経新聞」は、以下の記事を伝えました。
サブプラ猛威、これから影響 値上げラッシュはどこまで…
<記事本文 このところ、新聞紙上に最もよく登場する言葉の1つが「サブプライムローン」だろう。出ない日はないのではないか、と思うくらいである。
「米国の低所得者向け高金利型住宅ローン」と訳されている。このローンを核とする商品群が、いま、世界中に“猛威”をふるっている。
このおかげで金融機関などが巨額の損失を出し、連鎖が連鎖を呼んで、株式相場や為替相場の足を引っ張る。もうかるところに流れるのが宿命の投資資金は、当然、こうした市場から逃げ出す。そして向かった先が商品市場。結果、原油や穀物の高騰の一因になっている。
原油の高騰は日本にとって何よりもこたえる。ガソリンだけではない。今年になって食品から日用品、電気・ガス料金と、ちょっと大げさだが、身の回りは見事なほどの値上げラッシュである。
新光総合研究所の集計によると、東証1部上場企業の今年度の業績は、経常利益の合計が7年ぶりに前年割れになる見通しだ。あまり“実感”はないが、6年間続いた好景気が曲がり角にさしかかっていることは見違いなさそうである。
しかし、この海の向こうからやってきたローンの猛威が、正味の影響を及ぼすのはむしろこれからである。この先、どこにどんなカゲを落とすのか。少々気が重いが、注目したい。(経済部 佐久間史信)
★そのアメリカの「サブプライムローン問題」が、日本のみならず世界を直撃しているようだ。日本や世界の金融機関や、国債や場合によっては地方債までが、欲の皮が突っ張りすぎて状況が読めないままに、多額を「サブプライムローン」に投資し、アメリカ経済とその危機を深く共有する構造になっているという。それが更に、原油・穀物を始め、世界の諸物価の高騰ラッシュにつながって来ているようである。我々は、その危機の形成過程と連鎖の構造をしっかりと見極めて行かなければならない。
☆2007年8月20日の「野村證券・証券用語解説集」は、以下の記事を掲載しました。
住宅バブルを象徴するサブプライムローン
<今年(2007年)の7月下旬から8月にかけて、「サブプライムローン」にからんだ問題が世界の金融市場を大きく揺さぶっています。日米欧・アジアの世界同時株安に加えて円高の進行、短期金融市場での流動性不安など、その影響は当初の予想以上に広範かつ深刻なものとなりつつあります。
サブプライムローン問題の本質を理解するために、問題点を大きく2つに分けて整理してみたいと思います。まずは、サブプライムローンそのものが抱える問題点について考えてみましょう。
「サブプライムローン」とは、所得の低い人やクレジットカードで返済延滞を繰り返す人など、いわゆる信用力の低い個人を対象とした住宅ローンのことです。通常の住宅ローンに比べて金利が高く設定されている分、審査基準は緩くなっています。米国で住宅ブームが本格化した2004年ごろから普及・拡大しました。今日では、米国で住宅ローンを借りる人の約15%が利用していると言われ、残高は米国における住宅ローン全体の1割程度にまで達しています。
一般にサブプライムローンは、最初の2年ほどは金利が低く固定され、それ以降は大幅に金利が高くなり、なおかつ変動金利が採用される仕組みになっています。そのため利用者は、購入した住宅の価格が値上がりした時点で、その住宅を担保にローンを借り増して対応したり、信用力が高い個人向けの「プライムローン」に借り換えをおこない、金利負担を軽減するといった措置を講じてきました。
しかし昨年(2006年)、米国の住宅ブームが終わって住宅価格が上昇から下落に転じると、このような担保価値を裏付けとした借り増しや借り換えができなくなりました。FRB(米連邦準備制度理事会)が実施した利上げによってローン金利が上昇したことも影響し、ローンの返済に行き詰まるケースが続出します。
こうして破綻するサブプライムローンが急増したわけですが、そもそもこのローンが一時的にでも機能したのは、米国で住宅価格が一本調子に上昇を続け、多くの人が今後も上昇が続くと楽観的に信じたからです。米国では2005年ごろから住宅が投機の対象になる例も多く見られ、関係者のあいだでは「住宅バブル」を危惧する声もあがっていました。いわばサブプライムローンは、米国における住宅ブームの異常な加熱ぶりを象徴するような存在だったわけです。>
ローンの証券化が連鎖的な損失を生んだ
<2つめの問題点は、上記のような危うさにもかかわらず、多くのヘッジファンドや金融機関がサブプライムローンと直接的、間接的に関係をもっていたことです。同ローンで個人に融資した住宅ローン会社は、回収リスクの一部を回避・転嫁する目的でその債権を小口証券化し、RMBS(住宅ローン担保証券)として売り出しました。RMBSは米国債などに比べて利回りが高かったため、ヘッジファンドなどがこれを購入したのです。
ヘッジファンドは銀行や証券会社などから資金を借り入れ、RMBSの投資を大きく膨らませていきました。さらには投資信託など、一般の投資家向け金融商品のなかにもRMBSを組み入れるものが現れました。こうしてサブプライムローンに関連した投資が世界中に広がるなか、昨年から今年にかけて同ローンの焦げ付きが増加し、RMBSの価格が大きく下落。住宅ローン会社の破綻が相次ぐとともに、RMBSに投資していたヘッジファンドも、その資金を提供した金融機関も連鎖的に損失を被ることになったのです。>
★上記、「野村證券」の記事は、さすが「証券会社」だけに、その危機の構造を簡明に解き明かしてくれている。RMBS(住宅ローン担保証券)が、「投資信託など、一般の投資家向け金融商品」にも組み入れられたという訳である。分かりやすく言えば、
危険なウィルスが広範な金融商品の中に組み込まれることで、危険部位から人体の全身にウィルスが蔓延し、転移に転移を重ね、やがて不治の病に罹り、死を余儀なくされていく、その前段階に今はあるのではないだろうか?世界の諸国民にとっての問題は、その病巣を突き止め、転移を防ぎ、健全な細胞の活力を取り戻させ、健康な身体=世界経済を再生させることであろう。だが、その道は険しく遠い。
家を追われ、職もない…サブプライムショック拡大の現実
<アメリカの低所得者向け住宅融資「サブプライムローン」の焦げ付きが、世界の金融市場に激震を与えてからほぼ1年。問題は収束に向かうどころか、拡大の一途をたどっている。
震源地アメリカでは、家を追われた「ローン難民」が急増し、政府系住宅金融会社までが経営危機に陥った。世界的なインフレも巻き起こし、日本にも、ガソリンや食料品高騰が津波のように押し寄せている。
「戦後最大の金融危機」の現場を追った。
「20年暮らした自宅を手放す気持ちが分かるか。もう涙も枯れ果てたよ」
米東南部ノースカロライナ州の元AP通信記者ウィリアム・トウさん(72)。自らは心臓病を抱え、昨年4月には妻にがんが見つかった。夫婦の闘病資金で、年利11%、月額1368ドル(約14万6000円)のローンが払えなくなった。
「金利を下げてもらえないか。妻が治療中なんだ」
ローン会社と何度か交渉したが、相手にされなかった。裁判所に自己破産を申し出て自宅を売却した。妻は今春、亡くなった。
1988年に自宅を購入した時は、年6%程度の固定金利で30年ローンを組んだ。2000年に借り換えた「サブプライム」は低金利が魅力だったが、数年後にはその金利が跳ね上がる仕組みになっていた。
8月からは同じ町内で、借家住まいが始まる。トウさんは、「政治家や住宅ローン会社の連中は、私のような生活を一度、経験してみるべきだ」と憤る。
◇
ロサンゼルスから車で約1時間。カリフォルニア州リバーサイド郡の高級住宅街には、スプリンクラー付きの芝生の前庭が広がる。しかし、次々に目に飛び込んでくるのは、「差し押さえ物件」「銀行所有」などの立て看板だ。
「急転直下の出来事でわけがわからない」
中古のワゴン車の中で一人暮らしを続けるガイ・トレバーさん(53)は悲嘆にくれる。
04年に四つの寝室がある2階建ての住宅(158平方メートル)を25万ドルで購入、その後、住宅の価値は40万ドルにまで上がった。担保価値が上がったことから06年にローンを借り換えた。返済額は倍に増えたが、「資産価値も上がり続けているので不安はなかった」。
しかし、住宅の価値は約半分に急落。住宅不況で、インテリア・デザイナーの職も失った。昨年7月、自宅を差し押さえられ、妻と2人の子供とも別居した。「金もないし、仕事もないし、希望もない」
◇
「職求む。実務経験あり。MIT(米マサチューセッツ工科大学)卒」
昨年末に米証券会社を解雇されたジョシュア・パースキーさん(48)は6月下旬、体の前後に手製の「求職看板」を付け、ニューヨーク中心部の金融街を練り歩いた。
理系では世界最高峰といわれる名門大学を卒業し、証券実務の経験も豊富だが、半年たっても再就職先が見つからない。「妻と5人の子供を養わなければならない。日本の金融機関でもいい」と切実に語る。
◇
米抵当銀行協会(MBA)によると、08年1~3月の「サブプライムローン」での住宅差し押さえ比率は10・74%にのぼる。
焦げ付きは、貸し手の金融機関に深刻な影響を与える。国際通貨基金(IMF)は4月、サブプライム関連の損失が、09年までに世界全体で9450億ドル(約101兆円)に膨らむとの試算を発表した。日本の国家予算(一般会計約83兆円)を上回る損失額だ。
損失は米政府系住宅金融会社の連邦住宅抵当公庫(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)にも広がり、米政府が救済に乗り出す事態となっている。
雇用も直撃された。2007年のアメリカの金融部門の従業員は15万人減った。08年はそれ以上の減少が懸念されている。>
★アメリカ経済が、この「サブプライムローン問題」で危機に瀕している。「プライム」とは、金持ちで、「サブプライム」は貧乏人ということらしい。ということは、つまり貧乏人にとても払えないような多額のローンを負わせ、しかし最初の支払いは安くていいよ、だが、支払いはやがて高額になっていき、やがては払えない額になって、お手上げになり、住宅は没収、金融機関も回収できずに「不渡り」の山を築く。その結果が、上記の惨状である。かつての豊かなアメリカ、中産階級が豪奢な生活を誇り、世界一購買力の高いアメリカは、スタインベックの「怒りの葡萄」のような、荒れ果てた荒野にならんとしている。
☆5月19日の「産経新聞」は、以下の記事を伝えました。
サブプラ猛威、これから影響 値上げラッシュはどこまで…
<記事本文 このところ、新聞紙上に最もよく登場する言葉の1つが「サブプライムローン」だろう。出ない日はないのではないか、と思うくらいである。
「米国の低所得者向け高金利型住宅ローン」と訳されている。このローンを核とする商品群が、いま、世界中に“猛威”をふるっている。
このおかげで金融機関などが巨額の損失を出し、連鎖が連鎖を呼んで、株式相場や為替相場の足を引っ張る。もうかるところに流れるのが宿命の投資資金は、当然、こうした市場から逃げ出す。そして向かった先が商品市場。結果、原油や穀物の高騰の一因になっている。
原油の高騰は日本にとって何よりもこたえる。ガソリンだけではない。今年になって食品から日用品、電気・ガス料金と、ちょっと大げさだが、身の回りは見事なほどの値上げラッシュである。
新光総合研究所の集計によると、東証1部上場企業の今年度の業績は、経常利益の合計が7年ぶりに前年割れになる見通しだ。あまり“実感”はないが、6年間続いた好景気が曲がり角にさしかかっていることは見違いなさそうである。
しかし、この海の向こうからやってきたローンの猛威が、正味の影響を及ぼすのはむしろこれからである。この先、どこにどんなカゲを落とすのか。少々気が重いが、注目したい。(経済部 佐久間史信)
★そのアメリカの「サブプライムローン問題」が、日本のみならず世界を直撃しているようだ。日本や世界の金融機関や、国債や場合によっては地方債までが、欲の皮が突っ張りすぎて状況が読めないままに、多額を「サブプライムローン」に投資し、アメリカ経済とその危機を深く共有する構造になっているという。それが更に、原油・穀物を始め、世界の諸物価の高騰ラッシュにつながって来ているようである。我々は、その危機の形成過程と連鎖の構造をしっかりと見極めて行かなければならない。
☆2007年8月20日の「野村證券・証券用語解説集」は、以下の記事を掲載しました。
住宅バブルを象徴するサブプライムローン
<今年(2007年)の7月下旬から8月にかけて、「サブプライムローン」にからんだ問題が世界の金融市場を大きく揺さぶっています。日米欧・アジアの世界同時株安に加えて円高の進行、短期金融市場での流動性不安など、その影響は当初の予想以上に広範かつ深刻なものとなりつつあります。
サブプライムローン問題の本質を理解するために、問題点を大きく2つに分けて整理してみたいと思います。まずは、サブプライムローンそのものが抱える問題点について考えてみましょう。
「サブプライムローン」とは、所得の低い人やクレジットカードで返済延滞を繰り返す人など、いわゆる信用力の低い個人を対象とした住宅ローンのことです。通常の住宅ローンに比べて金利が高く設定されている分、審査基準は緩くなっています。米国で住宅ブームが本格化した2004年ごろから普及・拡大しました。今日では、米国で住宅ローンを借りる人の約15%が利用していると言われ、残高は米国における住宅ローン全体の1割程度にまで達しています。
一般にサブプライムローンは、最初の2年ほどは金利が低く固定され、それ以降は大幅に金利が高くなり、なおかつ変動金利が採用される仕組みになっています。そのため利用者は、購入した住宅の価格が値上がりした時点で、その住宅を担保にローンを借り増して対応したり、信用力が高い個人向けの「プライムローン」に借り換えをおこない、金利負担を軽減するといった措置を講じてきました。
しかし昨年(2006年)、米国の住宅ブームが終わって住宅価格が上昇から下落に転じると、このような担保価値を裏付けとした借り増しや借り換えができなくなりました。FRB(米連邦準備制度理事会)が実施した利上げによってローン金利が上昇したことも影響し、ローンの返済に行き詰まるケースが続出します。
こうして破綻するサブプライムローンが急増したわけですが、そもそもこのローンが一時的にでも機能したのは、米国で住宅価格が一本調子に上昇を続け、多くの人が今後も上昇が続くと楽観的に信じたからです。米国では2005年ごろから住宅が投機の対象になる例も多く見られ、関係者のあいだでは「住宅バブル」を危惧する声もあがっていました。いわばサブプライムローンは、米国における住宅ブームの異常な加熱ぶりを象徴するような存在だったわけです。>
ローンの証券化が連鎖的な損失を生んだ
<2つめの問題点は、上記のような危うさにもかかわらず、多くのヘッジファンドや金融機関がサブプライムローンと直接的、間接的に関係をもっていたことです。同ローンで個人に融資した住宅ローン会社は、回収リスクの一部を回避・転嫁する目的でその債権を小口証券化し、RMBS(住宅ローン担保証券)として売り出しました。RMBSは米国債などに比べて利回りが高かったため、ヘッジファンドなどがこれを購入したのです。
ヘッジファンドは銀行や証券会社などから資金を借り入れ、RMBSの投資を大きく膨らませていきました。さらには投資信託など、一般の投資家向け金融商品のなかにもRMBSを組み入れるものが現れました。こうしてサブプライムローンに関連した投資が世界中に広がるなか、昨年から今年にかけて同ローンの焦げ付きが増加し、RMBSの価格が大きく下落。住宅ローン会社の破綻が相次ぐとともに、RMBSに投資していたヘッジファンドも、その資金を提供した金融機関も連鎖的に損失を被ることになったのです。>
★上記、「野村證券」の記事は、さすが「証券会社」だけに、その危機の構造を簡明に解き明かしてくれている。RMBS(住宅ローン担保証券)が、「投資信託など、一般の投資家向け金融商品」にも組み入れられたという訳である。分かりやすく言えば、
危険なウィルスが広範な金融商品の中に組み込まれることで、危険部位から人体の全身にウィルスが蔓延し、転移に転移を重ね、やがて不治の病に罹り、死を余儀なくされていく、その前段階に今はあるのではないだろうか?世界の諸国民にとっての問題は、その病巣を突き止め、転移を防ぎ、健全な細胞の活力を取り戻させ、健康な身体=世界経済を再生させることであろう。だが、その道は険しく遠い。